読売新聞「自由席」発達障害(論説員 永田広道)

「理解への道を歩もう」

第14回読売演劇大賞「男優賞」にノミネートされた草剪剛さんが、昨年末に終了したドラマ「僕の歩く道」(関西テレビ系)でも主役を好演していた。
主人公「テル」は、自閉症で知的程度は10歳前後。動物園の飼育係だ。人の感情は読み取れず、思いやる事が難しい。抽象的な話は理解できず、こだわりが強い。時々パニックにも陥る。一方で、自転車のツール・ド・フランス歴代優勝者をそらんじる。
様々なトラブルを起こし、巻き込まれながらも、その純真さが周囲の視線を温かく変えていく。
関西地区の視聴率は平均18.9%と好評だったという。
自閉症を含め、発達障害をテーマにしたドラマは殆ど無かっただけに、障害の内実を初めて知った人も少なくなかっただろう。
各地で発達障害支援センターのオープンが続いている。2005年4月施行の支援法を受け、保育士などへの研修や特別支援教師の配置も進んできた。
発達障害への正しい認識が社会に広がり始めていると言える。
発達障害は、脳の機能障害とされる。その程度は様々だが、自閉症などの広汎性発達障害や、注意散漫で衝動的な行動をとる注意欠陥多動性障害、読み書きが苦手な学習障害などに分類される。
意思疎通の難しさなどから疎外され、不登校になる例も目立つという。決して「わがまま」や「しつけが悪い」のではなく、生来の障害である事を、まず知らなければならない。
文部科学省の02年の調査では、義務教育課程で発達障害疑われる子供は6.3%にも上った。
知能的に問題の無い人も多く、両親でさえ気付きにくいが、周囲との比較で障害は判明しやすい。
幼い時ほど症状を抑えられるし、対人関係も教えていける。
何より、教師ら関係者が早期に障害を見つけ出すことが肝要だ。
さらに、この障害には未解明の部分が多い。その実像や教育指導法を探り出す為にも、支援や研究を進める必要がある。
新たな学会も誕生した。「日本矯正教育・発達医学研究大会」が昨年11月、京都市内で初めて開かれ、家庭裁判所調査官や少年院教官、精神神経科医らが参加した。
少年院などでは発達障害が疑われる収容者が比較的多い。障害に気付かず、何の対応もなされなかったケースが大半だ。
すでに院側は、集団行動訓練で様々な経験を積ませたり、表情やしぐさから感情を読み取る学習を重ねたりして教育効果を上げている。
医学的には、発達障害や感情をつかさどる脳の解明が進む。
先進的な矯正教育と、最新医療を融合させる学際的研究となる。
今後の成果を、いち早く教育現場や社会に還元して欲しい。
我が国の児童精神科医は欧米と比べ極端に少なく、発達障害の専門家は「ほんの一握り」と言われるなど課題は数多い。
まだ、障害への偏見もある。
テルのような「人の心を推し量れない」という障害の存在自体を、一人ひとりが理解し、受け入れることから支援を始めたい

これは関西版だけに掲載されているものなのかどうなのか分からないのですが…。
皆が理解知れくれるともっと生きやすいんですけどなかなかそれも難しいみたいです(ーー;)